2024/2/10

レジリエンス(立ち直る力)の重要性

学業やビジネスなど領域にかかわらず明確な目標を設定し、それに向かって努力を重ねることは非常に大切なことです。一方でその目標を必ず達成できるかというとそうではなく、誰しも自分や他人の期待に反して失敗をしたり何かしら挫折と呼べる経験をしたことがある人も多いのではないでしょうか。

英語にはレジリエンス(resilience)という単語があり、「回復力」や「再起力」と訳される言葉なのですが、それは困難を抱えたり何かに失敗し苦境に立たされた時にその苦しい状況を自らの力で乗り越え、立ち直る力のことを指して使われます。

教育業界では目標達成とその過程に焦点を当てることが多くなりがちですが、私はむしろ期待した結果が得られなかった時に、いかにその苦しい状況を乗り越えて前進していけるかというレジリエンスの高さがその人の人生の幸福度に大きく関係していると感じています。

私が指導する生徒たちは皆それぞれに目標を持ち、時には苦労しながらも全員がゴールに向かって進んでいます。私も彼らの目標達成のために可能な限りのサポートをするのですが、残念ながらその人自身が満足のいく結果を得ることができないケースも多々あります。特に大学受験生は年齢的にもまだ成人したばかりという段階で、志望校に不合格になってしまったという結果をすぐには受け止めきれない場合も見受けられます。現実を受け止めきれないということは、必ずしもその人の精神的な弱さを意味しているのではなく、その人がそれだけ目標として掲げたものを強く望み相応の努力してきたことの裏返しでもあります。何かにチャレンジする経験が多ければ多いほど、同時に失敗する経験の数も増えていくというのは当然のことです。

ここで大事なのは、その好ましくない結果に一時的に打ちひしがれてしまったとしても、しばらく休息したのちに再度奮起をして前進することができる強さがあるかどうかです。失敗は挑戦した人のみが獲得できる証のようなものですから、適度な反省こそ必要であれ、それを後ろ向きに捉える必要はありません。また、辛い時は心と体を休める期間を意図的に設けることも非常に大切です。冷静に自分が直面している状況が見えてきたら、今度はその辛い経験を糧として前に進む姿勢を持つことが重要です。

過去に私が指導した生徒の中に、中学高校にほとんど通っていなかったけれど一念発起して最難関大学を目指すことにしたという人がいました。結果的には第一志望に合格することにはできなかったのですが、誰もが知っている名の知れた大学に進学することができ、受験が終わった後に彼が次のようなことを話してくれました。

「自分は中学高校のほとんどの期間まともに勉強をしてこなかったけれど、今回大学受験をすることにして自分なりに勉強をしてみた。ただ、その努力は自分の期待していたほどではなくて、今回こそ追い込まれたら死ぬ気で勉強して努力するだろうと自分に期待していたけれど、実際は思ったほどにはできなかった。今度また何かに挑戦する機会があったら、その目標を達成できるかどうかだけではなくて、次こそは最後まで全力で自分を追い込んで努力し切れるかどうかを自分自身で確かめたいと思っている。」

彼の言葉はとても分析的で前を向いているように思えます。第一志望合格という目標は達成できませんでしたが、その挑戦は無駄になることなく彼の糧となっていると私は感じました。彼自身が実は生来的にレジリエンスが高い資質を持っていてそれがこのタイミングで開花したとも考えられますし、大学受験という経験を通して新たにレジリエンスを獲得したのかもしれません。いずれにせよ、彼は適切に自己評価をしていて、苦境を乗り越えるだけの姿勢を持つことができていると言えるでしょう。 

レジリエンスという言葉はビジネスの領域では広く使われるようになってきているのですが、教育業界でこそレジリエンスを高めるためのサポートを充実させていく必要があると思っています。先に挙げたような目標に対する達成不達成だけではなく、進学や転職、移住などによる住環境や対人環境の変化など精神的に負荷がかかる状況において柔軟で弾力性のある精神性は大切になってきます。大きく自信を損ねてしまったり、自分自身を見失いそうになるような辛い状況に直面した時に、素直に周囲の人々に助けを求めることができ、同時に自分自身の力でも立ち直る力を養い、長い人生の中で様々なことを諦めない姿勢を持つことができるように生徒をサポートしていきたいと思っています。

松本和也

国際基督教大学卒。いわゆる文法から積み上げていくタイプのオーソドックスな指導法で物腰が柔らかで話しやすいのが特徴です。また、授業内容は論理的で、具体的。抽象的なことも言葉をかみ砕いて説明する指導が好評を得ている講師です。

 

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