2024/1/29

アグネス・チャンに学ぶ子育て術

職業柄、様々な親子関係を垣間見て「こういう関係は素晴らしいな」と思ったり、逆に「親がこういう接し方だと子どもは苦しいだろうな」と反面教師にすることもあります。とは言え、自分の子育てとなると、答がない難問に、答を求めるべきか自体を含めて、日々試行錯誤しています。

そんな中で、ふと手に取ったのはユニセフでの慈善活動でも知られるアグネス・チャン氏の「スタンフォードに三人の息子を合格させた50の教育法」という本でした。

文字通り50のポイントが分かりやすく紹介されている中で、特に私の琴線に触れたポイントを11個に絞ってご紹介します。

ちなみに、このポイントは、幼少期のお子様を持つ保護者に限らず、中高生の保護者にとっても役に立つことでしょう。

①夫婦間で教育方針を決める
こちらは花まる学習会代表の高濱先生も大切にしている点ですね。高濱先生はさらに踏み込んで「家訓を作ることが大切」と言っていますが、アグネス氏も「大事な方針はいつも夫と話し合って決めてきた」と書いています。

②自己肯定ができる子に
教育熱心な方にとってはもはや見飽きるほどよく目にする「自己肯定感」という言葉ですが、アグネス氏は「セルフエスティーム」と呼んでいます。

「どうすれば子どもにセルフエスティームを持たせることができるか?」という最も知りたいテーマについて、アグネス氏が大切と考えるのは「人と比べないこと」。「子どもの価値は何かができてもできなくても少しも変わらない」。

理屈として分かってはいてもついついて比べてしまう親御さんが多いのではないでしょうか。特に、兄弟姉妹がいるケース。比較をしないためには強い自戒の念が必要ですね。

③「忘我」ができる子に
実はアグネス氏自身はコンプレックスだらけだったそうです。転機が訪れたのは中学1年のとき。きっかけはボランティア活動を始めたこと。

身体が不自由な子、難民の子、孤児院で暮らす子どもたち・・・想像もしなかった過酷な環境で生活している同世代の子供たちと出会って、自分がいかに恵まれていたのかに気づいた
=自分のことを忘れた

目の前の子どもたちのことの方が自分の悩みよりもずっと重要だと感じて、無我夢中でボランティア活動に取り組むうち、自分のコンプレックスなど忘れてしまった。
→自分の行動が誰かのためになり、自分が人の力になって周りの役に立てる実感したとき、その子は自分自身が本来持っている素晴らしい価値に気づくはず

④感謝の気持ちを持てる子に
「おかげさまでの心や感謝の気持ちを忘れると、どんなにお金を持っていても貧しい人間になるし、どんなに人に囲まれていても寂しい人間になるよ」といつも子どもに話してきたそうです。

「感謝の気持ちを持ってほしい」これは普遍的な願望ですし、多くの親が共感するところでしょう。ただ、ここまで説得力のある言葉で伝えているという親は多くないのではないでしょうか。むしろ、親自身がついつい愚痴や不満をこぼしたりしていないでしょうか。何を隠そう私自身も胸に手を当ててみて、大いに改善の余地があると痛感しました。

⑤お金に支配されない子に
お金で買えないものを教えることからスタートして、「お金がなくても楽しいことがいっぱいある」「お金より大事なものがある」と伝えてきたアグネス氏。自由に使えるお小遣いは高校生まで渡さず、プレゼントも年に2回だけ。クリスマスにサンタさんが運んでくれるものと誕生日にパパとママから渡すプレゼントだけ。

これも私自身は胸に刺さりました。誕生日、クリスマスそれぞれに祖父・祖母からのプレゼントもあり、4つというのが恒例で、それ以外は徐々に財布のひもを固く締めつつあるものの、年に2回とはかけ離れている現状。ただ、やはり「物欲にまみれてしまうのではないか」と危惧を抱くことが増えて参りました。

⑥出る杭になる勇気のある子に
・「無理にみんなと同じになることはない」
・「変わっているね」と言われる子がいると、「あの子いいね。とってもスペシャルだね」と積極的にほめるようにしてきた。
→子どもが「個性」を出しやすい雰囲気を作ってきた。

これにも心を打たれました。私自身、日頃から日本的な同調圧力はよくないと思っていますし、多様性のある社会にしていかなければと考えている一方で、子どもの運動会で、他の子と全く異なる行動をしている子どもを見たときに、内心冷や冷やしたり、「あの子大丈夫かな~」と感じる自分もいました。ただ、アグネス氏の強い信念に基づいた言葉に打たれ、そんな自分を恥ずかしく思いました。「スペシャルだね」素晴らしい言葉ですね!

⑦失敗を恐れない子に
「失敗しても次の段階に行くためのワンステップにすればいい。何事も無駄はない」

私自身、中学受験での第一志望への不合格から始まり、大学受験も現役での全滅→浪人、その後も失敗だらけで、1回で成功したためしがない人生(※そういえば結婚は1回だけですが・・・)なので、座右の銘が「失敗は成功のもと」です。この方針には共感しかありません。

ただ一方で、この方針を貫くというのは容易でないことも理解しています。
例えば、「まずは子どもに実践させてみる」という方針一つとっても、牛乳を自分でコップに入れるのでも食卓の上に派手にこぼしたら「おい!」と声を荒げてしまう自分にはっと気がついて「いかんいかん」と反省したり・・・世の親御さんもきっと「失敗を恐れない子になってほしい」と望んではいるものの、それを貫く難しさに直面しているのではないでしょうか。

この本を通じて痛感したのはアグネス氏の信念の強さです。

⑧難しい道を選ぶ子に
「迷ったときには、一番難しい道を選ぶ」自身が父から遺されたこの言葉を子育てでも実践していたアグネス氏。

「宿題があるけれど、テレビも見たい」→宿題をやろう
「喧嘩したときに謝るのか、謝らないのか、どうしよう」→謝ろう

と「一歩踏み出す勇気をくれる言葉」(アグネス氏)とのこと。

確かに、これは「強さ」に直結する行動指針だと思いました。とても素晴らしく、見習いたいと思う反面、若干の懸念点も感じました。

例えば、子どもが「学校に行きたくない。けど行かないといけない」という場合。
難しい方=学校に行くという選択。だから、「学校に行く」という選択が最善なのか。もし仮にいじめなどで大きなストレスがかかっていたら、むしろ袋小路に追い込むことになり、逆効果ではないか?とは思いました。

ただ一方で、このようなケースでは、しっかりお子さんと対話して「行きたくない原因は何なのか?」まで聞き出した上であれば、そもそも「迷う」状況にはならないかもしれません。

「迷ったとき」というのが、どの程度の、どういう種類の迷いなのか、というのは非常に重要な気がしますが、その点さえクリアできれば、確かに「芯の強さ」を生み出し、「非凡な人生を歩む」ための指針と言えるでしょう。

⑨「恩返しの心」を持つ子に
「他人に迷惑をかけるな」は子どもに誤った価値観を持たせてしまう考えで、本来であれば「人はみんな迷惑をかけあっていて、それを許し合って生きている。だからその分、周囲に対して感謝の気持ちを持って恩返しの行動をするように」が正しい、とアグネス氏は書いています。

この考えには大いに共感します。「他人に迷惑をかけるな」は日本では当たり前に言われていることですが、悪しき風習だと思います。これが足の引っ張り合う文化となり、同調圧力の源泉とも言えるでしょう。

⑩気づく力
「子どもの一日の出来事を知りたい」多くの親がそう思うことでしょう。ただ、「今日どんなことあった?」と聞いても、子どもはつれない返事。これはまさにうちでも当てはまります。アグネス氏はまず先に自分の一日を息子たちに報告しました。すると、子どもたちも一日で一番印象的な出来事を話してくれたそうです。

この報告のメリットは、3つあります。

a.共に喜びあったり、慰め合ったりすることができる
b.お互いの信頼感が高まる
c.一日の出来事を思い出し、整理して表現することはレポートを書くときのためのよい訓練になる

個人的には、特にcは意外性がありました。a,bは想像の範疇でしたが、実利的なメリットもあるのですね。

⑪人生の哲学の難題を語り合う
アグネス氏の家庭では、神様の存在などのテーマについても語り合ったりしていたそうです。

私が様々な受講生の相談に乗っていて感じるのは、ご家庭でそのような深いテーマでの議論をしている方は非常に少ないのではないか、ということです。

例えば、「どのような大学・学部を目指すのか?」一つ取っても、なんとなくネームバリューがある大学、具体的には早慶、難しい場合はGMARCHを目指すということだけ決めていて、学科はその中で消去法で考えるというパターンが非常に多いです。そして、「その先はどうしたいか考えてる?」と聞いても、「決めてない」か、「とにかく大企業に入りたい」という意見が多いです。これ自体が悪いわけではないものの、「進路についてちゃんと考えたことはないのかな」と感じてしまうことが度々あります。そしてその背景には、「どのような人生を歩みたいか」「何をしているときが幸せを感じるのか?」「どんな社会がよいと思うか」などについて、誰かと話し合ったりする機会が少ないのでは・・・と感じます。

こういうテーマこそ、家庭で話し合うべきではないでしょうか。

もっとも、私自身のことを話すと、現在は子どもも小さいので、正直言いますと、リアリティはまだありません・・・・。また、自分が子供のころは、このような大きいテーマを議論する家庭ではありませんでした。もっとも、中学以降は学校の友人と語り合う機会はありましたが、今思えば意見が割れるテーマでの「議論」というものではなく、むしろお互いに「共感」を求める会話です。さすがに大学に入ってからは友人とも議論をする機会は少しずつ出てきましたし、結婚してから妻とはそのような話し合いの機会を持つことがあります。が、自分がそのような議論が得意ではない(=ビハインドがある)という点は事あるごとに自覚しますし、大人になってみて、やはりそのような機会は家庭内で養われるべきものではなかったかと痛感します。

当然、夫婦間でも意見が分かれることもあるでしょう。ですが、そういった場面も含めて子どもに見せるというのは、非常に重要な気がします。それこそが哲学的であるからです。

以上、アグネス・チャン氏の著作を読んで感銘を受けたポイントをまとめました。

この本自体は、未就学児以下の子どもを持つ保護者向けに書かれた本だと思いますが、読んだ感想としては、高校生を持つ保護者の方にもきっと役に立つと思い、シェアさせていただきました。ご参考になれば幸いです。

究進塾代表 : 並木陽児

大学受験生に化学を教えています。最近ハマっていることは、川遊び(ガサガサ)と魚の飼育です。

© 2001–2024 究進塾 All Rights Reserved.