2024/4/16

様々な親子とお会いして垣間見えること

仕事柄、中学生、高校生、高卒生、大学生とその保護者様という組み合わせでお会いすることが多いのですが、そこである傾向が見て取れます。

端的に言うと、ご本人が主役、保護者様がサポート役になっているかどうか、30分もお話すれば分かるのです。

特に初めてお会いする教室見学のとき、私は「現在の状況はいかがですか?」という質問から入ります。その際の反応は大きく分けると、以下のいずれかに当てはまります。


①本人が手を挙げるなど意思表示をして、しっかり話される。保護者様は「何かご質問はありませんか?」と私が振ってから初めて話し始める

②保護者様が概要を話した後、ご本人様にバトンタッチする

③本人が話し始めたのに、途中で保護者様が話し始めるなど、バッティングが度々起こったり、話者がたびたび変わるなど、どっちが主導権を握るのかが分かりくい

④ほとんどの状況を保護者様が話す

この反応は「生徒本人がどれだけ主役になっているか?」を測る試金石とも言えます。
①→②→③→④の順番に「本人の主役度が高い」と言ってもよいでしょう。

①は理想形ですが、この割合はとても少ないです。ましてや中学生の場合は、自分一人で現在の状況を話すということは難しいでしょう。ちなみに、②も決して悪いわけではありません。きちんと役割分担ができていたり、親子で息が合っていることが確認できます。

意外と多いのが、③のタイプです。このタイプは、保護者様がご本人よりも前に出てしまう、という姿勢が現われています。厳しい言い方をすると、本人を信頼しきって任せていない。

そして④。保護者様の中では「きちんと伝わらなかったらどうしよう・・・」「この子は言葉足らずだから・・・」という心配があるのだと思いますが、本人の主役度は最も低いと言えます。

興味深いことに、最初にお会いしたときのこの分類は、その後の成績の伸びや入試結果とも一定の相関性があります。

今年の入試でも、よい結果が出た方を思い浮かべてみると、①または②のパターンがほとんどでした。第1志望に合格した方は、保護者様とは最初に教室見学でお会いして以来、数年間お会いせず、合格のご挨拶で久しぶりにお会いしたというケースも少なくありませんでした。それだけご本人が自立しているという証だと思いますが、そういうケースはたいていの場合、①か②が当てはまります。

これは保護者様のコミュニケーション力、というよりむしろ、胆力の賜物とも言えるかもしれません。

対して、③、④のパターンは、受講し始めても伸び悩んだり、途中でやめたり、また、入試まで続けても望むような結果が出ないということが度々起こります。

これはおそらく、本人が主役になっていないのでしょう。別の言い方をすると、保護者様が本人を主役にしようとしてこなかった故の結果とも言えます。

私が見てきた限り、①、②は入試結果にも反映していますが、それだけではなく、本人のメンタルの安定性にも関係性があると感じます。極論を言えば、①、②のような関係性が無意識で実現できていれば、すでに子育ては成功と言ってもよいかもしれません。「それは飛躍しすぎではないか?」「暴論ではないか?」と思うかもしれませんが、少なくとも私から見ると、親子でこれだけよい信頼関係が築けていれば、十分に自立していて、この先自分で歩んで行けるのではないかな、と感じます。

何気ない瞬間に、親子関係のすべてが現われる、と言っても過言ではありません。

それでは、どのようにそういう関係を築いていくのか?と言うと、それは次のような子育て方針ではないかと思います。

「親は子供の後ろから見守り、必要に応じて(背中から)追い風を送るべし。決して、自分が子供よりも前に出るべきではない。前に出ようとしても、その気持ちを抑えて見守るべし」

これは私が信じている子育ての理想形です。
現在、私自身が100%これを実現できているとは言えませんが、理想形として目指しているものです。

では、それを邪魔するものは何なのか?

最近、大学時代の友人と会ったときにそれを感じる発言に遭いました。
その友人は東大を卒業して、転職を何度もしてキャリアアップし、現在は海外で働く、いわば「成功者」です。そんな彼が子育ての話になったときに「やっぱり(自分の子も)東大か京大、海外ならアイビーリーグには行かせたい。否、行かないとまずいと思うんだよね」と言っていました。

ここまで正面から親の本音を聞くことができたのは、彼と私の関係性からだと思いますが、当塾にいらっしゃる保護者様からも、それに近い発言を聞くことはこれまで度々ありました。

「なんとしても国公立にいかせたいんです」「やっぱり早慶には何とか・・・」「少なくともMARCHには言ってもらわないと・・」こういった発言を何度聞いたことでしょうか。

これらはいわば、親のエゴです。

「とは言え、親としては自然な感情」「子供のためを思ってのこと」「内心思うだけなら問題ない」という意見もあるでしょう。

ですが、やっぱりそういう親の意向が子供の人生に与える影響を考えると、決して歓迎できる姿勢ではありません。むしろ、親として不勉強だ、と言いたいです。

とは言え、実際のところ、高学歴で、いわゆる成功者に入る親ほど、そのような姿勢を持っていることが少なくないのが大きな問題だと思います。

親が親として日々勉強し、成長し、自分のエゴを乗り越えて、子供の後から見守りながらついていく、そうなったら、幸せを感じられる人がもっと増えるに違いない、そう信じてやみません。

究進塾代表 : 並木陽児

究進塾代表。最近ハマっていることは、川遊び(ガサガサ)と魚の飼育です。

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