2024/1/18

【大学物理】電磁気学 第1回 – 静電気、帯電、静電誘導、誘電分極

こんにちは。究進塾 編集部です。今回は、江口先生の電磁気学の解説動画をご紹介します。

内容は大学の電磁気学のイントロダクションとなっています。

📝この記事でわかること
・静電気
・帯電
・静電誘導(導体)
・誘電分極(不導体)

究進塾 編集部

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江口先生の動画解説

はじめに
当記事は、動画で解説をしている内容をご紹介していますが、音声を流せる環境にある方はぜひ動画をご覧いただき、江口先生の授業の雰囲気も一緒に掴んでいただければと思います。

 江口和弘講師
「【大学物理】電磁気学 第1回 – 静電気, 帯電, 静電誘導, 誘電分極」
(所要時間 20:00 )

動画目次
1. 電気の発見(0:37~
2. 静電気力(1:54~
3. 帯電(5:50~
4. 導体と不導体(7:29~
5. 静電誘導と誘電分極(9:33~
6. 練習問題1(11:04~
7. 練習問題2(15:40~
(分数をクリックすると該当箇所が別窓で開きます)

電気の歴史

電気が発見されたのは、かなり昔の話です。

紀元前600年頃にギリシャ人のタレスが、琥珀(樹液が化石したもの)に色々なものがくっつくことを発見したのが、電気の起源だと言われています。

電気は英語で「electricity」ですが、この語源も「琥珀」の意味から来ています。

このように電気の発見は、物に何か力がはたらいて引力を及ぼすという、いわゆる摩擦電気から始まっています。

また最近の若い人はやらないかもしれませんが、小学生の頃に皆がよくやっていた、下敷きで髪の毛がくっつく遊びがあります。これも静電気です。

ちなみに「電気」という漢字は、中国語の「雷電之気」の省略から来ています。江戸時代にはエレキテルと呼ばれていました。

なぜ物質同士がくっつくのか

なぜ物質同士が摩擦によってくっつくのか、その理由を原子から解説します。

原子の構成

髪の毛にしても下敷きにしても、物質であるため原子から構成されています。

原子
2つの要素から構成されています。
①中心にある原子核
②原子核の周りを回る電子

中性子
原子核の中には「中性子」があり、3つの要素で構成されています。
・電気的にはゼロのもの
・陽子=電気的にプラスのもの
・電子=電気的にマイナスのもの

原子自身は電気的に中性、つまり±0です。

帯電の仕組み

化学の世界では「イオン化」ともいいますが、この状態から電子が1個抜けると0(中性)からマイナスが抜けてしまうので、結果的にプラスになります。「陽イオン」「プラスイオン」とも言います。

逆に、この状態に電子が外から1個やってくると、中性のものにマイナスが1個加わります。そうすると全体的にはマイナスになります。

このように、電気の量が中性の状態、±0からプラスになったりマイナスになったりという状態のことを「帯電」と言います。

下敷きと髪の毛の場合

この考え方を元に、下敷きと髪の毛の例を考えてみましょう。

この場合は下敷きと髪の毛を擦ることにより、髪の毛の中にあった原子から電子が下敷き側に移動します。

すると全体的に髪の毛はプラスに帯電し、下敷きはマイナスに帯電します。

そしてこのプラスとマイナスが引き合って引力が働くため、物同士がくっつくという仕組みです。

斥力とは

物質それぞれがプラスとマイナスで異符号の場合、その物質同士はくっつき、引力が働きます。

しかし同符号の電荷(プラスとプラス、マイナスとマイナス)の場合には反発力が働きます。
この反発力は物理用語でいうと「斥力」といいます。

ポイント
・異符号の電荷⇒引力
・銅符号の電荷⇒斥力

帯電序列

摩擦により物質がプラスとマイナスのどちらに変化するのか、というのは大体調べられています。

これを「帯電序列」と呼びます。

帯電序列は表に示されており、下に様々な材料や物質が書いてあり、右に行くほどマイナスに帯電しやすく、左に行くほどプラスに帯電しやすい物質であることを表しています。

髪の毛は左から2番目の赤い字、下敷きは大体プラスチックで出来ているので右側の青い字、ポリエステルなどにあたります。

つまりこの場合、髪の毛から下敷きに電子が移った結果、髪の毛の方が下敷きよりも表の左側にあるためプラスに帯電し、髪の毛よりも右側にある下敷きがマイナスに帯電します。

帯電と電荷

物質がそれぞれプラスとマイナスになった結果、物質同士がくっつきます。このはたらきを、「静電気力」と言います。

そして電気を帯びることを「帯電」といい、英語で言うと「charging」と言います。

そして「電荷」というものがありますが、電磁気学のなかでも抽象的でわかりにくい部分です。

「電荷」とは電気量のことであり、電気量とは、どれぐらいの量を帯電したのかということです。

極端な例で言うと+2なのか、+3なのか、−4なのか、ということです。

この電気量のことを「電荷」と呼んでいて、英語では「charge」と言います。単位は「C(クーロン)」です。

電気の最小単位

電気の単位には「電気素量」という最小単位があります。

これはe=1.60218×10⁻¹⁹[C]の電荷で、これが最小単位です。

電気の量は、この数の整数倍しか起こりません。

ただし、このeは「⁻¹⁹」という非常に小さな量です。通常扱う電気量に比べてこの感覚が非常に狭いので、連続的に値を取りうると考えても差し支えありません。

ちなみにこの電気素量というのは、電子が持つ電荷量のことでもあります。

導体と不導体

「導体」とは、電気をよく通す物質のことです。

反対に「不導体」は電気を通さない物質のことをいいます。絶縁体、誘電体とも言います。

導体と不導体、この2つは何が違うのでしょうか。

両方とも物質ですから、原子から構成されています。大きく違うところは、電子の動きにあります。

導体の場合、電子が完全にこの原子から離れて自由に動くことができます。この自由に動ける電子を「自由電子」と言います。

一方、不導体の場合は、右の図のように電子がやはり原子核の周りを回っているのですが、この原子は原子核から離れることはできません。自由に動くことができず原子核に縛られているので、「束縛電子」と言います。

不導体は様々なものがあります。

<不導体の代表例>
ガラス
プラスチック
空気
不純物の入っていない水
紙など

一方、導体の代表的な物質はというと、ほとんどは金属です。

静電誘導と誘電分極

このような状態のときに、外からプラスに帯電した物質を近づけると何が起こるでしょうか。

導体の場合、電子はこの物質内を自由に動けるため、電子はプラスに引きつけられて全て外の物質側に偏ります。これを「静電誘導」と呼んでいます。

不導体の場合、電子は原子核から離れることはできません。しかし、左側に「プラスに帯電した物質」が来たので、くっつこうとする力がはたらきます。決してこの原子核から離れることはできないけれど、影響を受けて少しだけ左側にずれます。するとプラスとマイナスが分かれたような状況になります。

この、電気がプラスとマイナスに分かれることを「分極」と呼び、「誘電分極」と言います。

まとめ電荷を帯びたものを外から近づけた時に起こる現象。

導体 :静電誘導
不導体:誘電分極

練習問題

今回は、2問の練習問題を解いていきます。

問題1

帯電していない箔検電器に、次の操作をしたとき、
箔の電荷、動きはどうなるか。

(1)負に帯電した不導体を金属板に近づける。
(2)その後、不導体はそのままにして金属板に指で触れる。
(3)その後、指を金属板から離してから、不導体を遠ざける。

 

 

※箔検電器:ガラス瓶の中にゴム栓が通してあり、金属の板が入っていて、その先端に薄い金属の箔が2枚ついている構成のもの。金属ハブの部分は、金属板との接続部分を中心に閉じたり開いたりすることができる。

(1)の解答と解説

A. 箔はマイナスに帯電し、開く。

箔検電器の金属板は導体であるため、プラスとマイナスが均等に存在しています。

そこに、マイナスに帯電した不導体部を、金属板に近づけます。

すると金属板にあったマイナスが反発されて、下の金属箔の方に移動してきます。

 

ここで注意してほしいのは、動けるのはあくまでも電子だけということです。

金属箔はトータルで0よりもマイナスに偏るため、箔と箔がマイナス同士で反発します。

結果、この箔は開きます。

(1)のポイント・最初は均等に電荷が存在している

・マイナスに帯電した物質を近づけると、電子だけが金属箔に移動する

・金属箔がトータルでマイナスに偏る

箔同士がマイナスで反発する

(2)の解答と解説

A. 箔は中性になり、閉じる。

(1)の結果、箔が開いた状態のまま、今度は金属板を手で触ります。

金属板を触る人は地面に立っています。接地しているということは、地面に電気が逃げていきます。

この場合では、余分にあったマイナスの電気が逃げていきます。どこまで逃げるかというと、“元々の状態”つまり中性の状態まで、余分な電子が全て手を通し地面の方に流れていきます。

すると画像左側のように、最初と同じ状態に戻り中性になります。

このとき、箔の電気はどちらもプラスマイナスで0となり、電気力が働きません。結果、この箔は閉じてしまいます。

(3)の解答と解説

A. 箔はどちらもプラスになり、開く。

(2)で箔が閉じた後、指を離します。

このとき、この金属は全体的にはマイナスが不足している状況になっています。マイナスが不足しているということは、全体的にプラスに帯電している状況です。

そして上に近づけていた、マイナスに帯電している物質を遠ざけます。反発しているものがなくなったので、箔に偏っていた電子が均等に散らばっていきます。

ただし全体的にマイナスが不足していて、プラスに偏っている状況であり、箔と箔もプラス同士になっています。

両方ともプラスなので、反発して箔はまた開きます。

練習問題1のポイント金属の中は電子が自由に動けるという、静電誘導が題材にされている問題。

練習問題2

帯電していない球A、Bを絶縁糸でつるし、接触させておく。
負に帯電した不導体をBに近づけ

(1)A、Bがともに導体であるとき、
(a)A、Bを離した後、不導体を遠ざけると、A、Bの電荷はどうなるか
(b)不導体を遠ざけた後、A、Bを離すと、A、Bの電荷はどうなるか。

(2)A、Bがともに不導体であるとき
(a)A、Bを離した後、不導体を遠ざけると、A、Bの電荷はどうなるか
(b)不導体を遠ざけた後、A、Bを離すと、A、Bの電荷はどうなるか。

(1)の解答と解説

まず「A、Bがともに導体」つまり両方とも金属であるため、電子が自由に動ける状況にあります。

そこに、Bの球体付近にマイナスに帯電した不導体を近づけるため、Aの球体に電子が偏り、Bの球体は電子が不足したプラスの状況になっています。

(a)の解答:Aはマイナスに、Bがプラスになる。

Aがマイナス、Bがプラスに偏っている状態で、球体同士を離します。

そうするとこの偏った状態のまま離れてしまうので、Aはマイナスに帯電したまま、Bはプラスに帯電したまま離れます。

(b)の解答:電荷は00になる。

先に不導体を遠ざけ、その後にABを離した場合はどうなるか、という問いです。

最初の状態ではAはマイナスに、Bはプラスに帯電していますが、右側の不導体がなくなると電荷は元に戻り、ABともに中性の状態に戻ります。

その後に離しても電気的に中性と中性の状態のままなので、電荷はA、Bともに0になります。

(2)の解答と解説

球体A、Bがともに不導体である場合に、どういう現象が起こるかという問題です。不導体の場合は「誘電分極」が起こるため、球の中にいた電子は原子核から離れられず、Bの電子は負に帯電した不導体の方には移動はできず、右側に偏るだけです。

(a)の解答:球体の電荷量は両方とも0。

不導体を近づけても球体の電化はトータルでプラスマイナスゼロの状態にあります。この状況で球体同士を離しても、プラスマイナスゼロから変化はありません。その後にマイナスに帯電した不導体を遠ざけてしまっても、球体はプラスマイナスゼロです。結果、電荷量は両方とも0になります。

(b)の解答:球体の電荷量は両方とも0。

次に、不導体を遠ざけてから球体AとBを離すどうなるかという問題です。球体はどちらも不導体なので、最初の段階で電荷量は0です。マイナスに帯電した不導体を遠ざけても、0のまま変化はありません。さらにここからAとBを離しても0のまま変化はありません。結果、この場合も電荷は0になります。

まとめ

今回は導入の内容として「帯電」「電荷」をについて解説しました。

まとめ電荷を帯びたものを外から近づけた時に起こる現象。

導体 :静電誘導
不導体:誘電分極

これで電荷という、電気量の概念が学習できました。授業動画の続編では「第2回 – Coulombの法則, ベクトル解析の基礎, 電波, 電位,立体角」を解説しています。

おわりに

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